健康コラム

no.123
テーマ:「お茶」
2017年5月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

夏も近づく八十八夜~♪

誰もが一度は耳にしたことがある茶摘みの歌ですね。

八十八夜とはいつでしょう?
これは、立春から数えて八十八日目を指す5月2日頃になります。
※年によって異なります。

『八十八夜に摘まれたお茶を飲むと長生きできる』という言い伝えまであるそうです。

今月は、そんな「お茶」をテーマに健康コラムをお送りしたいと思います。
【1】お茶の歴史
お茶は紀元前に、中国で発見されたと言われています。

中国の歴史の中で最初にお茶が登場するのは、農業と漢方の祖・神農が、野草とお茶の葉を食べていたという逸話です。

当時のお茶は、今のように飲むものではなく葉を食べるもので、薬として用いられていたそうです。

この伝説から、お茶の発見は紀元前2700年頃、神農時代だと考えられています。
そして、嗜好品としてお茶が飲まれるようになったのは、漢の時代だそうです。

その後、遣唐使が往来していた奈良・平安時代に、最澄・空海・永忠らが、唐よりお茶の種子を持ち帰ったのが日本でのお茶の歴史の始まりだと言われています。

この頃のお茶は非常に貴重で、口にできるのは上流階級の限られた人々だけでしたが、江戸時代には庶民にもお茶を飲む習慣が広がったそうです。

ちなみに、その頃庶民に飲まれていたお茶は抹茶ではなく、簡単な製法で加工した茶葉を煎じた(煮出した)ものだったようです。
【2】お茶の分類
お茶は大きく、「紅茶(発酵茶)」「烏龍茶(半発酵茶)」「緑茶(不発酵茶)」の3種類に分けられます。
いずれも、ツバキ科の永年性の常緑樹である“チャ(※)”という植物から作られています。
※作物名はカタカナ表記

このお茶の種類は、加工方法の違いによって分類されています。

まず、発酵茶(紅茶)とは、茶摘後、完全に発酵させてから加工したもので、酵素の働きを最大限に活用したものです。
発酵というより、酸化させたお茶といった方がよいでしょうか。

そして、半発酵茶(烏龍茶)とは、酸化酵素をある程度活用して加工したものです。
酸化酵素の働きの程度によって包種茶(軽度)と烏龍茶(中度)に分かれます。

最後に、不発酵茶(緑茶)とは、茶の葉を蒸す、炒る、煮るなどの方法で、最初に酸化酵素の働きを止めて加工したものです。

そして緑茶は、茶園に覆いを『する』『しない』でさらに大きく分かれます。

野菜や果物には日光が必要なのに、お茶にはなぜ日光を当てない栽培方法があるのでしょうか。

それは、茶葉に含まれるテアニン(うまみ成分)が、根で作られ、葉に移動する際に、日光に当たることでカテキン(渋み成分)に変わるからです。

そのため、まろやかな味わいをもつ玉露(ぎょくろ)や碾茶(てんちゃ)は、日光を避けて育てた葉を使って作るのです。

同じお茶の分類の中でも、栽培方法によって味わいにこのような違いが出てくるのです。
【3】緑茶の種類と栄養
様々なお茶の種類をご紹介しましたが、ここでは、わたしたち日本人に一番馴染みのある不発酵茶(緑茶)の栄養に注目してみたいと思います。

不発酵の製法で作られたお茶は全て“緑茶”となるため、玉露や抹茶、番茶、煎茶、ほうじ茶、玄米茶なども緑茶の仲間になります。

【玉露】
日本で生産されている緑茶の中でも最高級品とされており、たいへん稀少な緑茶として知られています。

【抹茶】
安土桃山時代の茶人として有名な千利休によって大成された抹茶は、海外からも絶大な人気を誇るお茶の1つです。

【番茶】
遅い時期に摘み取られた茶葉を用いて作られていたため、晩茶とも呼ばれていました。
現在では固い茶葉や古くなった茶葉で作られる緑茶を番茶と呼びます。

【煎茶】
最も一般的な製法で製造されており、万人に好まれる緑茶です。

【ほうじ茶】
番茶や煎茶を強い火力でこんがりと褐色になるまで焙煎した緑茶です。
麦茶のような香ばしさを持っています。

【玄米茶】
ほうじ茶と同じく香ばしい香りが特徴の玄米茶。
白米を蒸して乾燥させたものをこんがりと炒り、そこへ番茶や煎茶を加えたお茶が玄米茶です。


今ご紹介したのが、最もポピュラーな6種類の緑茶ですが、他にも芽茶や玉緑茶など様々な種類の緑茶が存在します。

そして、これら緑茶にはミネラルやビタミン、カテキン、タンニン、テアニン、サポニンなど様々な栄養成分が含まれています。

カテキンには強い抗酸化作用があり、動脈硬化やがん、高血圧など、近年増加傾向にある生活習慣病の予防にも効果があると言われています。

また、サポニンには血圧低下作用や抗菌・抗ウイルス作用が、テアニンには、リラックス効果が期待できます。

ホッと一息つきたい時には、緑茶がおすすめですね。

毎日の水分補給に何気なく利用するお茶ですが、このように様々な健康効果が隠されているのです。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
日本クリニックがある京都には、お茶が有名な宇治市があります。

宇治茶のはじまりは鎌倉時代で、栂尾にある高山寺の明恵上人(みょうえしょうにん)のすすめで宇治茶の栽培が始まったそうです。

江戸時代に入ると山城の国・宇治田原湯屋谷の永谷宗円(ながたにそうえん)が、宇治茶製法と呼ばれるお茶の作り方を生み出しました。

この宇治茶製法が宇治にとどまらず大和(奈良)近江(滋賀)伊勢(三重)に広まり、宇治茶製法で作られたお茶が日本中で飲まれるようになったそうです。

このように、歴史を知るとさらに興味が湧いてきますよね。

私も小さい頃は、祖父母がおいしそうに緑茶を飲んでいるのを見て、こんな渋いお茶のどこがおいしいんだろ~?といつも思っていましたが、大人になってからその気持ちがよく分かるようになりました。

そして今回、色々な歴史をご紹介する中で、私自身も改めてお茶の魅力に気付くことが出来ました。

“なかなか家でゆっくりお茶を淹れて味わうことがない”という方も、是非、この機会に色々なお茶に挑戦してみてください。
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