健康コラム

no.122
テーマ:「いんげん豆」
2017年4月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

春がやってきましたね。

私は桜をみると、毎年春がきたと実感します。
みなさんの地域には、もう桜は咲いていますか。

さて、春が旬ということではないのですが、今日(4月3日)は「いんげん豆の日」です。

中国から日本に、いんげん豆を持ってきたとされる隠元禅師(いんげんぜんじ)の命日にちなみ、制定されました。

今回は、隠元禅師を偲び、「いんげん豆」についての健康コラムをお届けしたいと思います。
【1】いんげん豆とは? さやいんげんと同じ?
いんげん豆はどのようなもの?と聞かれたときに、「パッ」と頭に浮かばない方も多いかと思います。

似た名前で“さやいんげん”もありますが、いんげん豆と全く同じものを指す言葉ではありません。

では、いんげん豆とはどのようなものを指すのでしょうか。


いんげん豆とは、インゲンマメ属に属する豆類であり、インゲンマメ属には、ベニバナインゲン、インゲンマメ、ライマメなどが属します。
※属名などの時のみカタカナ表記にしています。


インゲンマメ属インゲンマメの中にも様々な種類があり、種皮の色の多様性により、以下のように分けられます。


◎白色系…豆全体が白いもの、白いんげん豆とも呼ばれる代表的なものとして、高級和菓子などに使われる「大福豆(おおふくまめ)」や、白餡の材料となる「手亡(てぼう)」があります。


◎着色系…単色のもの、斑紋(※)が入るもの ※まだらの模様のこと。
単色の代表的なものとしては、甘く煮て食べるだけでなく、西洋料理との相性もよい「金時豆(別名:赤いんげん)」があります。
鮮やかな赤紫色をしています。

また、斑紋が入るものは、斑紋が種皮全体に入る普斑種(ふはんしゅ)と一部分にだけ斑紋が入る偏斑種(へんはんしゅ)に分かれます。

普斑種には、甘納豆や煮豆に使われることが多い「うずら豆」があります。
名前の由来は、うずらの卵に似ているからだと言われています。

偏斑種には、「煮豆の王様」とも呼ばれる「とら豆」があります。
見た目が虎に似ているため、この名前がつけられたそうです。


はじめに“さやいんげん”は、いんげん豆とは異なるとお話ししましたが、さやいんげんは、いんげん豆の未熟なさやのことを言い、豆類でなく、野菜として扱われます。


長い説明にはなってしまいましたが、これで、いんげん豆がどのようなものかと聞かれても、「パッ」と頭に浮かぶ方が多くなったと思います。

いんげん豆について、少し詳しくなったところで、次は、含まれる栄養素をみていきましょう。
【2】いんげん豆の栄養について
先ほど、いんげん豆には様々な種類があるとお話ししましたが、含まれる栄養素には共通する点があります。

いずれも主成分はでんぷんです。
また、ビタミンB1やカリウム、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラル、食物繊維などを多く含みます。


〇ビタミンB1…疲労回復を助けます。また、脳にエネルギーがきちんと供給されるように働き、脳や神経機能の維持に関わります。


〇カリウム…体外に老廃物やナトリウムを排出する働きがあるので、血圧を安定させたり、足のむくみの軽減に役立ちます。


〇カルシウム…骨や歯の成分となり、骨粗鬆症の予防に欠かせません。また、筋肉の収縮と弛緩の調節にも関わります。


〇鉄…たんぱく質と結合し、酸素を全身に運ぶために必要な栄養素です。また、エネルギー産生に重要なATP(アデノシン三リン酸)の生成にも関わります。


〇亜鉛…体内の様々な働きを助ける栄養素です。血糖値を下げるホルモンであるインスリンの合成や味覚機能の維持、細胞の生まれ変わりを助けるためにも欠かせません。


〇食物繊維…特に水溶性食物繊維が多く含まれ、コレステロールの上昇を抑える働きがあります。


これだけ栄養たっぷりな食材だと、今すぐにでも食べたくなりますよね。

しかし、いんげん豆を食べるときには、注意してほしい大切なポイントがあります。

次は、そのポイントについてみていきましょう。
【3】いんげん豆を安全においしく食べるには…
一時期、“白いんげん豆 (※)”が世間を騒がせていたことを覚えていらっしゃいますか。

※いんげん豆の白色系(大福豆、手亡など)に加え、インゲンマメ属ベニバナインゲンの「白花豆」も白いんげん豆と呼ばれます。

10年ほど前に、ダイエット食材として流行しましたが、その時に、加熱不十分なまま食べ、嘔吐や下痢など苦しい思いをされた方もいらっしゃったかと思います。

いんげん豆は、普通の調理(乾燥豆の場合、一晩水に浸してからやわらかくなるまで、しっかり煮る)をすれば、おいしく食べることが出来ます。

しかし、加熱が不十分だと、いんげん豆に含まれるレクチンという物質により、嘔吐や下痢などが引き起こされてしまうこともあります。

レクチンは、糖に結合するたんぱく質の総称であり、動物や植物に広く分布しています。
植物の中でもいんげん豆は、特にレクチンを多く含むことが知られています。

いんげん豆のレクチンは、75℃の加熱では毒性が残るものの、沸騰状態で5~10分加熱すると、壊れるとの報告もあるようです。

また、生のままや加熱不足のいんげん豆を食べたことで、レクチンによる中毒を起こした事例は、海外でも報告されています。

ちなみに、さやいんげんは、未熟なさやを食べており、いんげん豆とは異なりますので、生で食べることもできる野菜です。

正しく安全に食べれば、おいしくて、栄養たっぷりな「いんげん豆」。

乾燥豆だけでなく、加熱などの加工がされており、袋から取り出して、そのまま食べることが出来るものなども販売されていますので、好みや用途に合わせて使ってみてください。

※商品ごとに扱い方が異なりますので、表示を見て正しく使ってください。


豆類の下ごしらえなどについてはこちらもご参照ください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
白いんげん豆が世間を騒がせた頃、学生だった私は、「白いんげん豆」ってこわい食べ物だなという感覚しかありませんでした。

今回、いんげん豆について調べていると、白餡に使われている豆も、白いんげん豆と呼ばれていて、普段おいしく食べている豆であると知り、驚きが大きかったです。

同じ食材であっても、調理の仕方次第で毒にもなる怖さを知り、みなさんにも正しい知識をお伝えし、安全に「いんげん豆」を食べていただければと思い、お話しさせていただきました。

さて、いんげん豆の旬は夏ですが、隠元禅師を偲んで、近日中に食べてみるのはいかがでしょうか。

乾燥豆の場合は、くれぐれも「しっかり加熱」で食べてくださいね。
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